イタリア語のために

　コロナ騒ぎ開始から，コロナには感染しなかったものの，体調の異変が次々に起こってしまいました．最後の最後に腰痛に襲われてから，リハビリを経てようやく回復傾向になったかなという感じです．こうして見ると，コロナの怖さは，他の病気と一緒になった時の怖さかなとも思います．病院に行くのですら恐怖でしたね．

　ブログのほう，イタリア語を再開するのにあわせてまたぼちぼち書いていこうかと思います．

　上についているリンクのほうで，ちょっと重要な変化がありました．Dizionario italiano multimediale e multilingue d’ortografia e di pronunzia 『イタリア語マルチメディア多言語発音正書法辞典』が，アドビのフラッシュの完全廃止と同時に使えなくなっていましたが，ようやくhtml5で，また自由に音声が聞けるようになって再開しました．

Dizionario italiano multimediale e multilingue d’ortografia e di pronunzia. Seconda edizione multimediale (2022). https://www.dizionario.rai.it/

　イタリア語で用いられる略号などのまとまったものも，こちらのサイトの一部の略号表のページ(https://www.dizionario.rai.it/p.aspx?nID=abbreviature-parole-A)をみるのがいいでしょう．

　自分で昔作ったページなど更新したりしながら，しばらくはイタリア語のリハビリなどやっていこうと思います．

(しばらくこの記事が一番上になるようにします)

　以下のように，公式サイトで発表されており，3月1日(日)の検定試験は中止になるようです．

「新型コロナウイルス(COVID-19)について、本日（2月26日）の昼過ぎ、安倍総理大臣から以下の発表がありました。
……中略……
これを受け、3月1日の検定試験はミラノ、ローマを含め、全面的に中止せざるを得なくなりました。
今後の当協会の対応については、理事会で協議の上、追ってこちらに掲載いたします。
なお、電話・メールでのお問い合わせには対応できかねますで、ご遠慮くださいますよう、お願い申し上げます。」

(追記) 公式サイトで，財政上の理由から返金は残念ながら不可能とのことですが，「次回（今秋の第51回のみ）への繰り越しを可能」とするとのことです．

https://www.iken.gr.jp/

　繰り返しになりますが，直接連絡などはしないようにしてくださいとのことです(多分検定協会のほうでも，感染防止のため最低人員のみ動かしている状態だと思います)．

(追記)
3月8日(日)実施予定だった検定試験CELI も延期になるそうです．「今後の日程などにつきましては、ペルージャ外国人大学から通達が届き次第、改めてご連絡をさせていただきます」とのことで，新しい日程は未定のようです．

https://www.iictokyo.com/news/index.php/view/189

各イタリア語関係の講座などの実施については，実施・中止はさまざまで，実施するにしても情勢でかなり流動的なようですから，公式サイトなどで確認してから行くようにしたほうがいいでしょうね．




　

『ピノッキオの冒険』Le avventure di Pinocchio : storia di un burattino のイタリア語朗読についてご質問がありました．前に書いた記事のリンクは切れているようですね．以下のサイト内で，真ん中あたりの Scarica gratis というところからダウンロードできます．

https://www.liberliber.it/online/autori/autori-c/carlo-collodi-alias-carlo-lorenzini/pinocchio-audiolibro/

本文はこちらからいろいろな形式のファイルでダウンロードできます．

https://www.liberliber.it/online/autori/autori-c/carlo-collodi-alias-carlo-lorenzini/pinocchio/


Liber Liber の公式サイトはこちら．

https://www.liberliber.it/online/

まだ買ってはいないのですが，アマゾンのサービスの一つ，オーディオブックの Audible のラインナップを久しぶりにみたら，イタリア語の原書朗読がいくつか入っていました(前からあって気がつかなかっただけかもしれませんが)．サービス加入は決めかねていますが，いくつかめぼしいところのリンクのみ．

Natalia Ginzburg (著), Margherita Buy (ナレーション) Lessico famigliare
https://www.amazon.co.jp/Lessico-famigliare/dp/B07F6V4S1P/

Cesare Pavese (著), Alberto Rossatti (ナレーション) Notte di festa
https://www.amazon.co.jp/Notte-di-festa/dp/B07FLFBQGC/

Cesare Pavese (著), Pietro Ragusa (ナレーション) La luna e i falò
https://www.amazon.co.jp/La-luna-e-i-falò/dp/B07GLWV1SB/

Giuseppe Tomasi di Lampedusa (著), Toni Servillo (ナレーション) Il Gattopardo
https://www.amazon.co.jp/Il-Gattopardo/dp/B07GJFHWXZ/

あとで見つけ次第追加していきます．

(追記)イタリアのオーディオブック出版社で検索するとほぼ一網打尽のようです．

Il Narratore s.r.l.社

Emons Edizioni

秋期実用イタリア語検定の出願期間が始まりました．締め切りは8月13日ですので，お早めに．

試験日：　一次：2019年10月6日(日)
　　　　　二次：2019年12月1日(日)　1・2級一次合格者

試験は級によって午前10時集合と午後13時15分集合とがあります．隣接する級は午前午後で併願も可能です．

2019年7月12日(金)～2019年8月13日(火) 消印有効

　試験地はこちら

　二次試験の会場も公表されています．最近は宿がすぐ予約でいっぱいになるようですから，合否の結果が出る前でも早めに宿をとるほうがいいかもしれませんね．

　　東京　：　DILA国際語学アカデミー（東京、四ツ谷）
　　大阪　：　コンベンションルームAP大阪（淀屋橋）

　くわしい出願方法はこちら

　紙の検定要項は丸善やジュンク堂などの書店や大学・イタリア語学校などで配布していますが，開催要項・受験申込書ともに，こちらからダウンロードも可能です．

　開催要項(pdf)
　受験申込書(pdf)

今は Web 申し込みも可能です．
　なお，検定料金は今年は従来と同じですが，来年度から4級以上は値上がりします．1級は3千円も値上がりして15,000円になるようですが，受験者数の割に面接などの試験官・試験会場の手配や手間は同じようにかかるので，しようがないことかもしれないですね．

この記事は随時書き足していく予定です

決まりきったフレーズでのトロンカメント

　トロンカメントが起こる形が普通のフレーズもあります．

maggior parte 大多数(maggiore parte も可)　
nel peggior modo possibile 最悪の形で　
Che cosa vuol dire questa parola? この言葉はどういう意味ですか？
　vuole dire もまれだが使われる．逆に Ci vuole molto tempo「たくさんの時間が必要だ」
　は Ci vuol molto tempo はまれ．
fuor di dubbio 確実に (fuori di dubbio も少なめだが可能)
come si suol dire よく言われるように (solere の三人称単数)
pian piano ゆっくりゆっくりと
a parer mio 私見では
un po' 少し (トロンカメントが圧倒的に多いものの un poco も時々使われる 次も同様)
per un po' = per un poco 少しの間

quale と tale は è, era など e で始まる essere の変化の前と幾つかの言い回しでトロンカメントで qual, tal となります．ただし，tal è, tal era などは現代では明らかに使われなくなっているようで，tale è, tale era にすべきでしょう．

　Qual è questo traguardo? このゴールはどうだい？
　per qual motivo どのような動機で
　in tal caso こうした場合に

bene は副詞で「とても」「十分に」など量的な意味になる時にはほぼトロンカメントの ben が用いられます．

　ben difficile, ben facile とても難しい，とても簡単な
　ben bene 十分に
　Ne siete ben persuasi? 君たちはそれをちゃんと納得しているのか？

male は「痛み」「苦しみ」の意味の名詞で mal di ... の形はほぼトロンカメントの male.

　mal di testa, pancia, macchina, mare 頭痛，腹痛，車酔い，船酔い

　


呼称に添える肩書きなどの名詞でのトロンカメント

　signore「氏」, professore「先生」, dottore「博士」, ingegnere「技士」は人名に添える肩書きになる場合は必ずトロンカメント．

　　il signor Rossi　il professor Serianni　
　　il dottor Moretti　l'Ingegner Puppo

　il signore Rossi のようにするのは南部イタリア方言です．


地名に添える名詞でのトロンカメント

　これも地名と一緒に固定されています．必ずしも起こるわけではないので，地名それぞれで覚えるということになるとおもいます．次のようなパターンになります．

　Valle → Val「谷」　Val di nizza ヴァル・ディ・ニッツァ
　Torre → Tor「塔」　 Tor di Quinto トル・ディ・クィント
　Colle → Col「丘」　Col di Lana コル・ディ・ラーナ
　Monte → Mon「山」　Monviso (= Monte Viso) モンヴィーゾ，モンテ・ヴィーゾ
　Casa → Ca'「家」　Ca' di Sola カ・ディ・ソーラ (モデナの近く)
　Porta → Por「門」　via di Por Santa Maria サンタマリア門通り(フィレンツェ)
　

トロンカメントの起こる単語で分かりにくいもののリスト

動詞は上の条件で全ての不定詞がトロンカメントを起こすので省略しますが，特に短い動詞は迷うことが多いのでリストにいれます．
ben → bene
bel → bello
par → pare (parere 思われる 現在三人称単数)
por → porre
ber → bere
trar → trarre
far → fare
aver → avere
mal → male　
pur → pure
or → ora 「今 (副詞)」 oro「金」(詩などで)
man → mano
vuol → vuole (volere の現在三人称単数)
voler → volere
fuor → fuori
val → vale (valere「値する」現在三人称単数) もしくは valle (女)「谷」
men → meno
suol → suole (solere「するのが常である」現在三人称単数)
fin → fine (女)「終わり」もしくは fino「…まで」
sin → sino (fino のまれな別形)
tal → tale
qual → quale
mo' → modo (a mo' di「として，の流儀で」の意味で)
muor → muore (morire「死ぬ」現在三人称単数)
pian → piano
dir → dire
ancor → ancora
allor → allora

トロンカメントがかなりの頻度で起こるケースで，外国人として注意すべきは，不定詞が絡んでくるところでしょう．

1. 不定詞の後ろに mi, ti, lo, le, ci, ne ... など小辞がつく時は，andarci「そこに行くこと」, leggerlo「それを読むこと」のように，トロンカメントしてから小辞をつけます．(不定詞について記事を書いていないのでいずれ書きます)

　　Non preoccuparti. 君は心配しないで．(＝Non ti preoccupare.)
　　Spero di incontrarlo il prima possibile. 彼にできるだけ早くあうことを私は望んでいます．

-rre に終わる形は，やはり一つ r を落としてから小辞をつけるので注意です．

　　Ci sono altri modi per trarne vantaggio.
　　　そこから利益を引き出す別の方法がある．(trarre vantaggio da ... …から利益を引き出す)
　　senza porci attenzione そこに注目することなく
　　　(porre attenzione a ... …に注目する　porco「豚」の複数形と同じ形！)
　　È possibile tradurlo in italiano? それをイタリア語に翻訳することは可能か？

2. 過去の不定詞で avere をとるものは，aver + 過去分詞になることが多いです．変化表では avere amato のように書かれますが，実際には aver amato が多いです．一方，essere + 過去分詞のほうは esser + 過去分詞になるのは頻度は低いですが，ないわけではありません．下の例は La Repubblica誌のもの(ちょっとだけ改変)です．

　Sono oroglioso di aver fatto parte di questo club.
　　このクラブに属していたことを私は誇りに思います．
　Sono orgoglioso di avere fatto parte della categoria.
　　この範囲に私が属していたことを私は誇りに思います．

　Ma il padre afferma di esser stato a casa fino alle 17.
　　しかし父親は17時まで家にいたと断言しています．
　Zambuto ha ammesso di essere stato a casa di Berlusconi.
　　ザンブートはベルルスコーニの家にいたと認めました．
　
イタリア語の文法許容の基準は新聞で使われるかだそうで，基本的に両方OKだということになると思いますが，試験などではどうなるかわかりません．avere + 過去分詞は aver + 過去分詞, essere + 過去分詞はそのままにするのがおそらく安全だと思います．ちなみにLa Repubblica 誌のサンプル例ですが，ネット全記事からの検索で aver fatto : avere fatto は 34,995 : 4,542 で，約7 : 1 でトロンカメント多数となります．esser rimasto : essere rimasto では逆に 1 : 10 でトロンカメント少数となります．他も概ねこの割合でした．


3. 不定詞が重なる場合．
　
助動詞の不定詞 potere, volere, dovere, sapere +不定詞は最初の助動詞がトロンカメント．
poter / voler / dover / saper dire

　Sono felice di poter esprimere la mia opinione
　　私の意見を表明することができることを幸せに思っています．

使役動詞 fare / lasciare + 不定詞も使役動詞がトロンカメント．
far / lasciar vedere

　So come far andare più veloce una moto.
　　私はどうやって車をより早く走らせることができるかを知っています．
　È meglio lasciar perdere.
　　方ておくほうが良い．

上の両方がかさなって，助動詞不定詞+使役動詞不定詞+不定詞という形も普通にあります．この場合，最初の二つ，つまり助動詞と使役動詞両方がトロンカメントになることが多いですが，片方のみトロンカメントということもあります．まったくトロンカメントなしは頻度は相当落ちるようです．

　Spero di poter far vedere quello che so fare.
　　私ができることをお見せできることを私は望んでいます．

　Molti mi accusarono di voler far cadere il governo.
　　多くの人は，私が政府を倒させたいと思っていると非難している．

La repubblica 誌で voler far credere : volere far credere : voler fare credere : volere fare credere で検索したところ，11 : 2 : 2 : 0 で，トロンカメント全くなしはこの組み合わせではありませんでした．しかし，volere fare uscire などいくつかの形はヒットしているので，まるっきりダメということもないようです．ただ，母語話者ではないにしても，やっぱり不定詞が三つも重なるのは聴覚的にも視覚的にも不格好という印象はありますね．


4. 動詞+名詞/副詞(句)の決まりきった言い回しが不定詞になる時

　例えば fare parte di「参加する」は，辞書ではこの形で載っていますが，実際に不定詞として用いられる時は far parte di の形が使われる傾向があります．andar(e) via「出て行く」, portar(e) via「連れさる」, metter(e) mano a「手をつける」などなど，起こりうるトロンカメントの可能性はここでも膨大にあります(トロンカメントが圧倒的に多いというわけでもないですが)．

　Vogliamo por termine alla violenza.
　　我々は暴力に終止符を置くことを望んでいる．

　Facciamo fatica a dar un giudizio imparziale.
　　公平な判断を下すのに我々は苦労をしている．

　Il governo non vuole metter mano a riforma fiscale．
　　政府は税制改革に手をつけたくないのだ．

トロンカメントの起こる条件

　トロンカメントは語尾の音が発音されない現象ですが，トロンカメントは無差別に起こる現象ではありません．引き起こす条件，トロンカメントされる音はある程度の決まりがあります．

1. r, l, n, m (大体この頻度順)の後のアクセントのない母音が切断されるのが普通です(歌詞などでは例外も多いですが)．例外としては地名などの Ca' (= casa)，un po' (un poco) など，母音の後の音節が落ちる例があります．
　トロンカメントされる母音は圧倒的に e が多いです．ついで o で，i, a はかなり少なく(ora)，u はほぼ皆無です(アクセントなしで u で終わる単語がほぼ皆無のため)．

　Non bisogna aver paura.
　　恐れを抱く必要はない．(aver → avere)

　un fil di ferro 針金 (filo → fil)

　fin ora (fino ora) 今まで(＝fino a ora), fin da quando (fino da quando) ……以来ずっと
　
　Han detto di no.
　　彼らは違うと言った．(hanno → han ただし口語で避けるべき)

　siam stati fortunati.
　　我々は幸運だった．(siamo → siam)

2. トロンカメントされる音は母音だけのことが多いですが，un po' のように音節一つが消えることもあります．命令形の va' など (＝ vai)の場合は母音の後の半母音が落ちます．

　È un gran bel traguardo.
　　それは偉大な素晴らしいゴールである．
　　　(grande → gran で音節 de が消える．bello → bel 母音のみの消失．子音が削られるのは次の3も参照)

　grande が gran になるトロンカメントは性・数を問いません．una gran fame「非常な空腹」a gran passi「大股で」．なお，母音の前で grand' になるのは，母音との接触で音が省かれる省音と呼ばれる別の現象になります(ここのところ間違えていました)．

3. 同じ子音が重なったあとの母音がトロンカメントされる時は，子音一つが削られます．

　possibilità di trar vantaggio da questa polemica
　　この議論から利益を引き出す可能性 (trarre → trar)
　per por fine a questa emergenza ambientale
　　この環境的非常事態を終わらせるために (porre → por)

4. トロンカメントは語と語が接触するところで起こるとされ，後ろに休止がある時(つまりコンマ，ピリオドなどがある時)は普通はトロンカメントがおこらないということになっています．

　　Vai! Va' a casa! 行きなさい！家に行きなさい！

　しかし，歌詞や詩などでは全く関係なく起こります．前の投稿でもとりあげた『私の心は』の冒頭にみられるトロンカメントはすべて休止の前のトロンカメントです．

　　Il mio cuore『私の心は』
　　Il mio cuor, il mio amor,
　　carezze e baci sogneranno ancor
　　　私の心，私の愛は
　　　愛撫と口づけをまだ夢見るでしょう
　　　(cuore → cuor, amore → amor, ancora → ancor)



5. トロンカメントは特に記号が添えられないことが多いですが，po' (poco)，mo' (modo ほとんと a mo' di「……として」のみ)のように，アポストロフォがつくことがあります．命令法の va' (vai), da' (dai), fa' (fai), sta' (stai) のアポストロフォのついた形は vai, dai ... などの形にトロンカメントが起こったものです．

6. 名詞でトロンカメントが起こる時は，複数形の語尾では起こらないとされています(が例外はあるようです)．上で挙げている un fil di ferro (＝un filo di ferro)「針金1本」 は due fili di ferri「針金2本」の時にはトロンカメントできません．

　探した範囲で見つかった例外ですが，fiore「花」は tra i fior (= tra i fiori) (『私の心は』にでてきます)などのように，複数形の語尾 fiori でもトロンカメントが起こるようです(歌詞などにかぎられるようですが)．

7. トロンカメントは時に文体にもかかわってきて，使うとやや高尚な雰囲気になるもの，くだけた口語的になるものなどもあります．上の pare → par のトロンカメント，あるいは Noi siam tutti morti. (= Noi siamo tutti morti)「我々は皆死んでいる(聖書)」などはやや高尚あるいは古風な響きがあるそうですが，同じ動詞の語尾の切断でも Han detto (= hanno detto)「彼らは言った」, Son tutti matti (= Sono tutti matti)「やつら皆狂ってやがる」などは口語のくだけた口調だそうです．トロンカメントが普通に起こるものは特に文体的な違いはないようですが，あえて普通におこるトロンカメントを避ける場合，もしかすると正式な言い回しというニュアンスがでるかもしれません．

8. トロンカメントは絶対起こるもの(a parer mio「私見では」mal di testa「頭痛」など)から任意で起こるもの，滅多に起こらないものなど，いろいろあります．あとで見ることになりますが，過去の不定詞では aver fatto はトロンカメントのほうが多数派ですが，essere stato は トロンカメントを使う esser stato は少数派になります．

　外国人が勝手にトロンカメントをすると，上の規則に抵触しないものであっても，母語的な感覚にはおかしく感じられるかもしれません．ぼくらとしては，聞いたことのないトロンカメント，あるいはくだけた口調になるようなトロンカメントは避けたほうがよさそうです．実際の用例などを見てから使用するというのはトロンカメントだけでなくイタリア語全般に当てはまることではあるようですね．

　イタリア語では，ある条件で単語の語尾の音が発音されずに省略されることがあります．これをトロンカメント(troncamento)，日本語の用語では「語尾音切断」あるいは「語尾音消失」と言います．アポコペ(apocope，ギリシャ語由来)と呼ばれることもあります．

　次のような文章を見た時，ちょっと読みにくいと感じるかもしれませんが，これは二箇所でトロンカメントが起きているせいです．

　　Mi par di aver già visto questa foto.
　　私はこの写真をすでに見たと思います．
　　= Mi pare di avere già visto questa foto.

　pare は parere「思われる」の三人称単数 pare の最後の -e がトロンカメントで切断され，さらに avere の -e がトロンカメントで切断されています．aver - avere のほうは知識なしでもなんとなく見当がつくかもしれませんが，par などは三人称単数形で辞書の見出しでも存在しないので，これはトロンカメントの知識を必要とします．このように，短い語でトロンカメントが起こると，元の単語を割り出すのも一苦労です．その一方で，日本語の文法書ではあまりページが割かれておらず，また，母語話者にとっては無意識の領域に入るせいか，イタリアの文法書でもトロンカメントの記述は実際的なものはあまりないように思います．

　しかし，トロンカメントは，非常に頻繁に起きており，実はすでに我々が当たり前のように馴染んでいるものだったりします．
　例えば un po' 「少し」は全てトロンカメントでできた形です．これはフルに書くと uno poco (この形はほぼ絶対に用いられません)で， po' は poco からトロンカメントでできた形で，さらに，不定冠詞男性単数の un の形も元は uno からトロンカメントでできた形です．
　挨拶では Buon giorno!「こんにちは」の buon がトロンカメントで，これはほぼ必須(buono giorno はほぼ皆無)です．一方 Buona giornata a tutti!「皆さんよい1日を！」はトロンカメントはあまり使われませんが，それでもBuon giornata a tutti! も，頻度が低いだけで実際は使われます．
　その他，un bel giorno (bello→bel)「いい1日」，mal di testa (male→mal)「頭痛」もそうです．
　モーツアルトの歌劇のタイトル Così fan tutteでも，これは Così fanno tutte の fanno がトロンカメントで fan になっているものです(この fan などは現代ではまず見かけないでしょう)．

　トロンカメントは義務的なものから，高頻度で起こるもの，起こることも起こらないこともあるもの，滅多に起こらない，あるいは詩や歌詞で起こるもの，特定の地域でよく起こるもの(逆に避けられるもの)などがあります．文体にも関わってきますが，口語的なルーズなトロンカメントもあれば，トロンカメントでやや高尚な文語的表現になる場合もあります．
　トロンカメントが特に頻繁に起こるのは，歌詞と詩です．現代のカンツォーネなどの歌詞でも頻繁にトロンカメントが起こり，しかも通常は滅多に起こらないパターンのトロンカメントも多いです．これらは元の単語とトロンカメントのパターンがある程度頭に入っていないとほぼ読めません．イタリアのカンツォーネが好きな人が多少の文法知識と辞書を片手にカンツォーネを訳そうとすると，意外に難しくて，大抵挫折することになりますが，原因の一つは頻繁に起こるトロンカメントのせいです(僕がそうでした……)．

　次の記事からは，具体的にトロンカメントの説明を書いていこうと思いますが，その前に，歌詞の中のトロンカメントを少し見ておきましょう．( )に入っているのがトロンカメントで省略される音です．

Il mio cuore Il mio cuor(e), il mio amor(e), carezze e baci sogneranno ancor(a) finché speranze avrà la mia felicità	私の心 私の心，私の愛は 愛撫と口づけをまだ夢見るでしょう 私の幸福が 希望を持つまで
Solo tu, mio tesor(o), all'alma triste che non ama più, potrai donare ancora tutta la gioventù	私の愛しい人，ただあなただけが， もう愛していないつれない魂に もう一度与えることができるでしょう 若さ全てを
Torna la primavera d'amor(e) nei nostri cuor(e) canta la giovinezza tra i fior(i) come allor(a)	私たちの心の中には愛の春が戻り 花の盛りの青春が謳歌しています　あの時のように
Il mio cuor(e), il mio amor(e), carezze e baci sogneranno ancor(a) finché potrò gioire finché potrò sentire d'amarti come allor(a)	私の心，私の愛は 愛撫と口づけをまだ夢見るでしょう 私が喜ぶことができるまで あの時のように私があなたを愛していると 感じることができるまで

　年号対応表を使う必要があったので，ついでにスマートに選択表示できるようなプルダウン形式のセレクトボックスを作成しました．年号の移行日もわかるようにしているので，これも多少便利かもしれません．選択したところでブラウザで何か動作が起こることはなく(そこまで能力はないのです……)，選択された年号が表示され続けるだけです．

(明治の始まり・終わりと大正，さらに令和も加えました)


大正以降の和暦・西暦対応表
明治1年　1868年 (1月25日〜)
　明治1年1月25日(新暦)は旧暦1月1日
明治6年　1873年1月1日 新暦実施
　明治5年は旧暦12月2日で終わる
明治33年　1900年
明治45年　1912年 (〜7月30日)
　7月30日が明治最後・大正最初の日
大正1年　1912年 (7月30日〜)
大正2年　1913年
大正3年　1914年
大正4年　1915年
大正5年　1916年
大正6年　1917年
大正7年　1918年
大正8年　1919年
大正9年　1920年
大正10年　1921年
大正11年　1922年
大正12年　1923年
大正13年　1924年
大正14年　1925年
大正15年　1926年 (〜12月25日)
昭和1年　1926年 (12月26日〜)
昭和2年　1927年
昭和3年　1928年
昭和4年　1929年
昭和5年　1930年
昭和6年　1931年
昭和7年　1932年
昭和8年　1933年
昭和9年　1934年
昭和10年　1935年
昭和11年　1936年
昭和12年　1937年
昭和13年　1938年
昭和14年　1939年
昭和15年　1940年
昭和16年　1941年
昭和17年　1942年
昭和18年　1943年
昭和19年　1944年
昭和20年　1945年
昭和21年　1946年
昭和22年　1947年
昭和23年　1948年
昭和24年　1949年
昭和25年　1950年
昭和26年　1951年
昭和27年　1952年
昭和28年　1953年
昭和29年　1954年
昭和30年　1955年
昭和31年　1956年
昭和32年　1957年
昭和33年　1958年
昭和34年　1959年
昭和35年　1960年
昭和36年　1961年
昭和37年　1962年
昭和38年　1963年
昭和39年　1964年
昭和40年　1965年
昭和41年　1966年
昭和42年　1967年
昭和43年　1968年
昭和44年　1969年
昭和45年　1970年
昭和46年　1971年
昭和47年　1972年
昭和48年　1973年
昭和49年　1974年
昭和50年　1975年
昭和51年　1976年
昭和52年　1977年
昭和53年　1978年
昭和54年　1979年
昭和55年　1980年
昭和56年　1981年
昭和57年　1982年
昭和58年　1983年
昭和59年　1984年
昭和60年　1985年
昭和61年　1986年
昭和62年　1987年
昭和63年　1988年
昭和64年　1989年 (〜1月7日)
平成1年　1989年 (1月8日〜)
平成2年　1990年
平成3年　1991年
平成4年　1992年
平成5年　1993年
平成6年　1994年
平成7年　1995年
平成8年　1996年
平成9年　1997年
平成10年　1998年
平成11年　1999年
平成12年　2000年
平成13年　2001年
平成14年　2002年
平成15年　2003年
平成16年　2004年
平成17年　2005年
平成18年　2006年
平成19年　2007年
平成20年　2008年
平成21年　2009年
平成22年　2010年
平成23年　2011年
平成24年　2012年
平成25年　2013年
平成26年　2014年
平成27年　2015年
平成28年　2016年
平成29年　2017年
平成30年　2018年
平成31年　2019年 (〜4月30日)
令和1年　2019年 (5月1日〜)


　まあ本来の用途ではないですが，選択した後に手を離してもそのまま該当年を表示させ続けることができるので，多少便利かと思います．

　タグは以下のような感じです．<select></select>の間に<option> </option> で挟んだ年号を次から次へと入れるだけ．最初から表示させたい項目は selected="selected"というのを <option> の中に入れておきます．

<select><option selected="selected">昭和以降の西暦・和暦対応表</option><option>大正15年　1926年　(12月25日まで)</option><option>昭和1年　1926年　(12月26日以降)</option><option>昭和2年　1927年</option><option>昭和3年　1928年</option><option>以下同様</option></select>

　今年を最初から表示させたい場合は，<option selected="selected">昭和以降の西暦・和暦対応表</option>の代わりに<option selected="selected">平成30年　2018年</option>にするだけです(順番と関係なく selected="selected" が入っているものを最初から表示させます)．そうすると以下のようになります．


昭和以降の和暦・西暦対応表
大正15年　1926年 (〜12月25日)
昭和1年　1926年 (12月26日〜)
昭和2年　1927年
昭和3年　1928年
昭和4年　1929年
昭和5年　1930年
昭和6年　1931年
昭和7年　1932年
昭和8年　1933年
昭和9年　1934年
昭和10年　1935年
昭和11年　1936年
昭和12年　1937年
昭和13年　1938年
昭和14年　1939年
昭和15年　1940年
昭和16年　1941年
昭和17年　1942年
昭和18年　1943年
昭和19年　1944年
昭和20年　1945年
昭和21年　1946年
昭和22年　1947年
昭和23年　1948年
昭和24年　1949年
昭和25年　1950年
昭和26年　1951年
昭和27年　1952年
昭和28年　1953年
昭和29年　1954年
昭和30年　1955年
昭和31年　1956年
昭和32年　1957年
昭和33年　1958年
昭和34年　1959年
昭和35年　1960年
昭和36年　1961年
昭和37年　1962年
昭和38年　1963年
昭和39年　1964年
昭和40年　1965年
昭和41年　1966年
昭和42年　1967年
昭和43年　1968年
昭和44年　1969年
昭和45年　1970年
昭和46年　1971年
昭和47年　1972年
昭和48年　1973年
昭和49年　1974年
昭和50年　1975年
昭和51年　1976年
昭和52年　1977年
昭和53年　1978年
昭和54年　1979年
昭和55年　1980年
昭和56年　1981年
昭和57年　1982年
昭和58年　1983年
昭和59年　1984年
昭和60年　1985年
昭和61年　1986年
昭和62年　1987年
昭和63年　1988年
昭和64年　1989年 (〜1月7日)
平成1年　1989年 (1月8日〜)
平成2年　1990年
平成3年　1991年
平成4年　1992年
平成5年　1993年
平成6年　1994年
平成7年　1995年
平成8年　1996年
平成9年　1997年
平成10年　1998年
平成11年　1999年
平成12年　2000年
平成13年　2001年
平成14年　2002年
平成15年　2003年
平成16年　2004年
平成17年　2005年
平成18年　2006年
平成19年　2007年
平成20年　2008年
平成21年　2009年
平成22年　2010年
平成23年　2011年
平成24年　2012年
平成25年　2013年
平成26年　2014年
平成27年　2015年
平成28年　2016年
平成29年　2017年
平成30年　2018年
平成31年　2019年 (〜4月30日)
令和1年　2019年 (5月1日〜)


　その年の出来事なども記述しておくと，簡単な歴史まとめになると思います．僕もそのうちイタリア歴史重要年表など作ってみようかともおもっています(誰かつくりませんか？)．

　なお，タグをそのまま表示させるのには <xmp> タグというのを使います． <xmp> </xmp> で挟んでいるところがそのまま表示されます．

日本の改元のニュース．動画は貼り付けできないのでYouTubeのほうで．下線部にカーソルを置くと単語の意味が出てくるようにしています．

https://youtu.be/Cnrf9lo9Tfk

L'imperatore del Giappone Akihito ha abdicato. In una sobria cerimonia nella sala del Pino del Palazzo imperiale, davanti a 296 alti esponenti del governo e delle istituzioni, alla presenza dell imperatrice e degli altri membri della casa imperiale, ha letto un discorso di circa due minuti, dopo i ringraziamenti solenni del popolo espressi dal primo ministro Shinzo Abe. Svolgere questo mandato, ha detto l'imperatore emerito, "è stato fonte di felicità". Akihito ha inoltre ringraziato "col cuore il popolo che lo ha sostenuto in questo compito" e ha detto che pregherà "per la felicità del popolo nella nuova era Reiwa" che inizia dal primo maggio 2019. Tokyo ha assistito alla prima abdicazione di un imperatore in 200 anni e all'accesso al trono di un nuovo Tenno, Naruhito. Per i giapponesi l'inizio della nuova era rappresenta un occasione per interrogarsi sullo stato dell'arte del Paese, in una fase storica che è piena d incertezze per la terza economia del mondo, la quale rischia di vedere il suo ruolo marginalizzato da una Cina sempre più arrembante in Asia orientale e dal tradizionale alleato statunitense sempre meno affidabile per quanto riguarda la gestione della sua sicurezza. "Sono nato nell'era imperiale dell'Heisei - dice questo giovane studente - ora mi sento un po' triste perché la 'mia era' è finita ma allo stesso tempo mi sento eccitato per la nuova era". "Mi sento grata ed emozionata - aggiunge questa donna - auguro all'imperatore emerito tanta salute. In passato tutte le successioni sono seguite alla morte del precedente imperatore e sono certa che il popolo non era tanto felice per festeggiare ma per questa transizione dell'era Heisei alla Reiwa ci sono buoni motivi per celebrare il passaggio e dare il benvenuto alla nuova era". "Ascoltando le storie di molte persone - conclude questa donna di 76 anni - mi auguro che non dovremmo andare di nuovo in guerra e che, rispetto a ciò, il nuovo imperatore sia un simbolo di pace. Sono un po' triste per l'abdicazione ma sono sicura che il nuovo imperatore raccoglierà al meglio l'eredità del precedente, ne sono fermamente convinta". Akihito ha 85 anni e ha regnato dal 1989 nell era denominata Heisei, ora al 31esimo anno.

　『サスペリア』の remake，ようやく見てきました．正直多分オリジナルは超えないだろうなと思っていましたが，その通りでした．オリジナルが「こいつらみんな魔女だったのか！」という結末だったのに対して，remake はその上を行く必要があることを考えると，薄々「悪い」予感がしていたのですが，その通りになったという感じです．それでも前半はまだましでしたが，クライマックスは映画祭で賛否両論になるのが不思議なぐらい，作りあぐねているのが見え見えでしたね．ダリオ・アルジェントの『サスペリア』にはじまる魔女三部作の設定を remake につかったのも，余計に筋を混乱させて収束しにくくしたのだと思います．イタリア語版DVDが出てもこれは買わないかな……
　ただ，ルカ・グァダニーノ監督にしてこういう結果になってしまうということは，多分ホラー映画で後々まで話題になるほどの作品をつくるのは非常に難しいということだと思います．そもそもダリオ・アルジェントも，オリジナルの『サスペリア』のレベルの作品は， Profondo Rosso ぐらいしか作れていないですから．
　本筋にはあまり関係ないですが，カメオ出演していたジェシカ・ハーパーさん(オリジナルのスージー役)は，主役陣に劣らない存在感でびっくりしました．今はiPS細胞で目の治療をしているとのことです．


追記：GYAO で2月19日までオリジナルのほうの『サスペリア』を見ることができます(英語版)．

　　https://gyao.yahoo.co.jp/player/00569/v08603/v0828500000000528167/

ダリオ・アルジェント監督作品の『サスペリア』(1977年)，ついにリメイク版日本でもこの1月25日から公開となります．監督はルカ・グァダニーノで，音楽は以前のプログレバンドのゴブリンに変わってレディオヘッドのトム・ヨークが担当となります．まああまり期待しすぎるとがっかりということもあるかもしれませんが，ともあれ42年ぶりのリメイク，どうなったのか見に行きたいと思います．



こちらはイタリア語版．



以前の記事の『サスペリア』のイタリア語はこちら．

　合格者が発表されていました．受験番号で確認できます．

　　https://www.iken.gr.jp/result/

　で，僕はどうだったかというとやっぱりリスニング壊滅した状態では一次突破など無理でしたね．しかし，今年はぼちぼち普通に本が読めるようになってきて，英語よりはイタリア語が先に出てくる状態になったことは収穫でした(もちろん英語がすごくできるというわけではありません)．
　これからはまた文法記事などアップデートしながら勉強ということになると思います．

　解答の発表はもう出ていました．音声資料も配布していました．過去問題集のCDでは，音声が2回繰り返されるところ，1回しか繰り返されないので，実践に即した練習がしたければ，この音声資料はできればダウンロードして取っておいたほうがいいでしょう．トランスクリプションも発表されています．いずれも10月16日まで公開なので，ダウンロードはいそいだほうがいいでしょう．

　　https://www.iken.gr.jp/result/

　で，結果ですが，筆記のほうは割と余裕で合格でした(語彙がまだ多少課題ですが)．作文のほうはギリギリ合格点かどうかというところでしょう．ところがリスニングが全然ダメで半分もできていませんでした……．こちらでもう，今季の合格は完全になくなりました．
　実感としては，リスニングは今の段階では音声的に聞こえていないところはほぼなくて，実はこちらのほうがまだマシだと思っていたので，少し落胆しています，どうも，まだ音声段階をクリアしただけで，文脈を追い切れるほどのレベルには到達していないということのようです．これが次の課題でしょうね．
　ともあれ，試験は終わったのでまた通常通りのブログに戻ることになります．まだまだ文法事項は書ききれていないし，以前書いた文法事項なども勘違いしているところなど見つかってきたので，全体をアップデートしなければいけないです．こちらも今年いっぱいで，最後に残っているやっかいな従属文は終わらせたいものです．